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またおなじ

 

涼しくて透明な、熱の光線が降り注ぐ。

 

早朝の西大路を歩く。

 

蝉がうるさくて苛々する。

 

 

昨晩、マンションの階段を上がっていると、踊り場のところで蝉が仰向けになっている。

 

足が開いているので、死んではいないと分かる。

むしろ、そばを通り過ぎようというものならいきなり飛び上がって暴れ出し、私の顔面めがけて突進してくるだろう。

 蝉は見た目もグロいし、鳴き声は安眠を妨げるし、こうして予想のできない動きをするので大嫌いだ。

 

二日前と三日前にも同じように踊り場に蝉がいて、でもどうしても部屋に帰りたくて、素早く静かにすり抜けた。つもりだったのだが、やはり蝉はジリジリいって暴れ出し、ちょうど私の顔の高さをすごい勢いでランダムに飛び回る。

分かっていたのに本能的に、ひいと叫んでドタバタ、必死に階段を駆け上がり、部屋までいってドアを急いでバタン!と閉める。

 

上った息を抑えながら、とんだ近所迷惑か、キチガイの類と思われても文句言えないな、と思った。

 

さすがに三日連続となると、同じことを繰り返す気になれない。

どうしても、分かっていても叫んでしまうし、足音を気にせず階段を駆けてしまうし、蝉を避けるその一瞬にかけねばならない膨大なエネルギーに自分でうんざりしてしまう。

たかが、蝉なのになぁ。

 

何度か立ち向かおうとし、諦めをループして、ついに今夜は部屋に帰らないと決めた。

裏にカラオケがあり、よく利用するのでそこで一夜を越そうと思った。

 

疲れていたので歌うつもりはまったく無かったのだが、せっかくだから一曲、とタッチパネルを操作したらもうだめだった。

結局そこから3時間ぶっ続け、まるまる歌ってしまった。

 

 

すぐ部屋に帰っても良かったのだけれど、なんとなくまだいそうな感じがした。

ひさしぶりにマクドナルドでも食べようと、西大路を歩いて西院まで行くことにしたのだ。

 

 

薄紅と優しい青が溶け合ったマーブルの液が、天に一息に広げられている。

光で空気中のホコリが降りてくるのが見える。

 

わざわざ馬鹿らしいかもしれないが、ときには意味のない散歩もよいものだ。

道端にきれいな景色をたくさん見つけた。

 

あ、

西院の交差点につくと、今年一番の夏を発見した。

 

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ぴんと葉を跳ね上げて、なるべく大量に光の恩恵にあずかれるよう、そのからだを思い切り太陽へと開く。

 

早朝のエネルギーは膨大かつ強力なので、すべての生き物のバッテリーはあっという間に充たされてゆく。

太陽の前では、どうしても元気にならざるを得ないのが、地球の生命体というものなのだろう。

 

 

姿勢の美しいヒマワリのおかげで、蝉に乱された精神がすこしマシになった。

 

何年かぶりの朝マックを食べ終えて、ダラダラと帰路に就く。

もうすぐサークルの合宿が始まる。

この事実にもまた夏を感じる。

 

 

熱の光線に涼しさはなくなっていた。

午前も6時をまわると太陽との距離が縮まるので、光は不透明になり、代わりに込められた熱の密度が増す。

 

 

今年もまた夏が始まる。

またおなじ話をしている。